人間関係もサブスク

「音楽も映画も、最近じゃ洋服も家具も、ぜんぶサブスクの時代だよなぁ……」 そうつぶやいたのは、大学時代からの友人、“コスパおっさん”。 どんな場面でも「それ、元取れるの?」が口癖の、合理性の鬼である。

そんな彼がある日、ビールを片手に言い放った。

「ま、彼女もサブスクでいいんじゃない?」

・・・出た。いつも以上にぶっ飛んだ発言だ。 が、よくよく聞いてみると、案外理屈は通っている。

サブスク時代の恋愛論

サブスクにはいくつか特徴がある。 定額で継続利用できる、利用頻度が高まるほどお得に感じる、保守・メンテコストが最小化される──。

これを“彼女”に当てはめてみると…?

反復性(継続して必要か)

寂しさ、癒し、承認欲求。人は誰かを欲する存在だ。恋人関係はまさに日常的なニーズに対するサービス。

可変性(飽きずにいられるか)

マンネリは恋愛の天敵。新しい趣味、会話の変化、ちょっとしたサプライズ。変化こそが継続利用の鍵である。

保守コストの回避

プレゼント、記念日、喧嘩の火消し、LINEの即レス対応、重たい将来の話。恋人関係は、意外にも高頻度メンテ型ハードウェアだった。

コスパ男の主張

「結婚って、人生最大の買い切り課金だろ。返品不可の長期縛り。 そのくせ保守コスト(=感情ケア)と解約違約金(=慰謝料)がエグい。 だったら、自由にカスタマイズ可能な“月額パートナー”の方が今の時代には合ってるだろ」

──このあたりから彼の語りがヒートアップしはじめる。

「たとえば“彼女ライトプラン”は週1チャットと月1デート。“彼女プレミアムプラン”なら、記念日対応+SNS共有権付き。 誕生日課金オプションとか、喧嘩の仲直り保証も追加料金でつければいい。クラウド彼女だよ」

完全に倫理観がクラッシュしているが、現実はこうした欲望に追いつきつつある。 AIチャットパートナー、VTuber恋愛、ホログラム彼女。選ばれ続ける“体験”としての愛が始まっているのだ。

サブスクと愛は両立するか?

私はふと、「本当の愛はサブスクできないんじゃないか?」と問い返した。 だが、コスパ男はすかさず切り返す。

「それ、愛と契約と制度をごっちゃにしてない? “愛”って感情だろ。“結婚”は法的契約。“彼女”は関係性のプロトコルにすぎない。 全部同じレイヤーで話すから、話がこじれるんだよ」

──正論すぎてツラい。

彼が言うには、「サブスク的な愛とは、自由意思によって更新され続ける“選ばれる関係”である」と。 法的拘束力も、所有権もない。けれど、だからこそ続く関係。 それってもしかして、最も誠実な“愛のUX”ではないのか?

UX設計としての愛

現代においては、パートナーシップすら「関係性の運用モデル」に落とし込む視点が求められるのかもしれない。

・週1ミーティングで関係性レビュー

・KPIは「会話の濃度」「感謝の言葉数」「目を見て話した時間」

・解約率を下げるために、定期アップデート&サプライズ設計が必要

なんて言っていたら、隣でコスパ男がニヤリとした。

「つまり、愛もまた“継続率の高いUX設計”が勝負ってわけだ

「彼女もサブスクでいいのでは?」という一見シニカルな提案は、 実は、恋愛を“制度から感情へ”、そして“感情から設計へ”と再定義する試みなのかもしれない。

所有しないけど、ちゃんと大事にする。 契約しないけど、ちゃんと選び続ける。 保証はないけど、ちゃんと寄り添う。

それはたぶん、「コスパではなく“関係性のサスティナビリティ”」の話だ。


次回予告:「月額3,980円で彼氏をレンタルしてみた女の話(ベーシックプランに闇あり)」 乞うご期待。

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